レッスンの昔と今

学生時代のレッスンについて振り返ってみる。


東海3県在住の学生が音大音高(芸高芸大)受験と言えば、何か一科目は必ずと言っていいほどそこに通っていたのでは..と思うほど代表的な音楽学校('教室'ではない)があった。
当時の私は、有名と言われる先生方のもとへ行っても合わずに転々としていたが、そこでは大学へ入る前まで10年ほどピアノ作曲ソルフェージュの3科目お世話になった。
と言っても、普通科の中学受験からそのまま中高一貫女子校に通い、授業休んでレッスンとかいう英才教育では全然ない。
(芸大の先輩である指揮のツノダさんもたしかここでソルフェージュだけ通われていたと記憶している)



その頃の音楽学校はピアノ科の講師だけでも100名近く在籍されていて、講師のほとんどが桐朋か東京芸大出身の先生方だった。入学試験後は桐朋女子から桐朋出身の'濃い先生'が長い間私の担当をして下さった。
思い出せることは、'厳しかった'の一語に尽きる。
臨時で芸大の先生のレッスンを受けた時は、ただ普通なだけでやさしい..と感動するほど濃い先生に洗脳されていた。
一時期は他の先生の所へ通って逃げた事もあるぐらい。でも結局は自ら濃い先生のもとへもう一度戻った。
どれほど濃いかって、恐ろしい時は4小節に全てのレッスン時間をかけるという濃さで、またある時は終始無言という最恐の時間もあった。それでも今となっては皮肉でなく本当に感謝している。


入学試験の他に、レベル分け進級試験や面接が度々あり、ソルフェージュだけでなくピアノ実技試験では担当の先生ではなく、誰もが知る偉い先生をわざわざ外から試験官として呼んで行うほどシステムが確立されていて、学校全体の空気も学生も常に緊張感が漂いピリピリしていた。
(初代校長が井口基成先生なので、その教育方針を井口門下の先生方が継承していたからだと思う)


ある時、専攻実技が志望校のレベルに満たないと判断された先輩が、先生から「あなた*声楽に変えたらどうかしら?」と言われているのを目にした。他にも「その実技レベルではムリ」と言われた人が進学を諦めてしまったり、私は上級に居続けるためとにかく勤勉に全てをこなし、サバイバルのような学生時代を送っていたなと改めて思い出す。
(*声楽は高校から始めても間に合うケースが多いことと、副科ピアノやソルフェージュ試験課題がそこまで複雑ではないためだと思われます。あくまで'受験'を軸に考えた場合の話)

そんな音楽学校に最近訪ねてみたところ、少子化やレッスンの多様化で場所も建物も全てが生まれ変わり、昔から知る先生はお二人だけで校風もガラリと変わって、あの頃の音楽学校はもう無くなっていた。




時代は変わった、というか、変わり続けている。

昔は「こうでないとダメ」「それでは無理」とか、「そうするのが常識」などと言う謎の常識観や決めつけ、否定強要支配の教育が多かったと思う。受ける側も、相手に決めてもらわないと自分がどうしたいのかもわからないという具合で両者は関係が成り立っていた。戦後の影響かアジア独特の思想というか、、もちろん今もその方針の方々は健在するし、それはそれで利点が全く無いわけでもないので否定はしない。そういうのが好きな人、必要な人もいる。

ただし、与えられる事・言われる事に従うだけというのはかなり古い。
視野が狭く、非効率的でもある。

広い視点を持ちすぎても閉鎖的環境では理解されず孤立するというパターンももちろんあり、そういう体験もしたけれど、社会が鎖国でなくグローバル化していく限り、それは一過性のものに過ぎないと思う。



話をレッスンに戻すと、
専攻にもよるとは言え、今は受験で出される課題に対して大学が要求するやり方でこなす事さえ出来れば、○○大学の××先生につかなくても○○大学には入れるし、幼少期から教育を受けていないと音楽家にはなれないという訳でもなく、日本の学校だけにこだわる必要もない。

思えば、昔ながらの「こうでなければ」はすでに学生当時から崩れてきていたのを周りの友人を見ても明らかだったし、その良き崩壊は今も続いている。




・自由であること
・発信側(教える側)の思い込みや謎の常識観で相手(受ける側)の可能性を潰すのではなく、伸ばし引き出すこと
・新しい道や方法は無限に自分で創り出せること


は、音楽に限らずあらゆる場面で重要だと考えている。
この先もっと今までに無かった流れが生まれてくる事は必然的なので、肝に銘じているつもり。


幸い個人でレッスンをする場合、どこかに雇われてそこの方針に従う必要が無いので、不要な制限や常識観にとらわれずに済む。
古き良き伝統は継承しつつ、時代と共に成長発展して自由に柔軟に対応していければと思う。

千種区ピアノksmusicnc

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